プレイボーイ

「あ…あのさ!佐伯…くん」

 

 

佐伯涼は、口を開かないまま横目でチラリと私を見た。

 

 

意識すればするほど、急に佐伯涼が男っぽく見える。

 

 

コーヒーのコップを持つ手が、大きくて骨ばっていて、やっぱり男の子の手なんだなぁと思った。

 

 

 

「佐伯涼でいいですよ。いつも石原さん、そう呼んでますよね?」

 

「えっ!?」

 

 

突然の佐伯涼のその言葉に衝撃をうけた。

 

 

いつも、職場ではちゃんと佐伯くんとか、佐伯さんて呼んでいたような…?

 

 

ていうか、そんなに話したこともないよね!?

 

 

すると、佐伯涼が、コーヒーをもう一口飲みながら、

 

ニヤリとイタズラな目で隣にいる私を見た。

 

 

 

「石原さん、昨日俺のことベッドで佐伯涼ってずっと呼んでましたよ」

 

 

「うそ!?」

 

 

「ほんとです」

 

 

「ていうか、あんた昨日の夜のこと、覚えてるの!?」

 

私がそういうと、佐伯涼は一瞬目を丸くして、すぐにあははっと笑った。

 

その笑った顔が、思ったよりも可愛いくてドキッとする。

 

 

「逆にさ、石原さんはまったく覚えてないの?」

 

 

「……私はまっっったく…覚えてないんだよね。ごめん」

 

 

 

佐伯涼が覚えているのに申し訳ないけど。

 

でも本当に思い出せない。

 

 

 

昨日4人で飲んでて、いつから二人になった?

 

 

それすら覚えてない。

 

 

 

佐伯涼は、「そっかぁ…」と言ってまた少し笑った。

 

 

そして、窓の外を見ながら、トーストを食べ始めた。

 

 

 

私も、なんとなく真似して、正面の窓の風景を見た。

 

 

 

はぁ…本当にこの空気すごく気疲れする。

 

本当に私……やらかした。

 

 

お酒はもう2度と飲みたくないって…こういうことがあると何度も思うのよね。

 

 

ふと窓の外を見ると、いつもどおりの土曜日の平和な朝の光景が広がっている。

 

 

私はなんだかそれが、切なくなった。

 

 

それに加えて…。

 

 

この隣に座る草食系男子は、のんびりとトーストをかじっているぞ?

 

 

 

こいつ…私とえっちしたのをバッチリ覚えているくせに…。

 

 

こうして超普通な態度でいられるのって、どうなのかな?

 

 

もしかして意外とプレイボーイ?

 

慣れてるのか?

 

 

草食系だと思って、バカにしてたのにな…。