すごく大事にされているような感覚

「じゃあ?次!佐伯さんのことも聞きたいな??あの、佐伯さんは、彼女とかいないんですか??」

 

ユリカちゃんはお酒の力もあり調子にのってグイグイと迫る。

 

 

顔が火照って、長椅子に座ってしばらく体が動かない私は、ぼんやりとそんな会話を聞いていた。

 

 

「おまえ、石原、もうできあがってんの?だっせ!」

 

「うっさい……バカにすんな!」

 

 

永倉の茶化しをかわして、ユリカちゃんに迫られている佐伯涼を見つめる。

 

 

そういえば…。

 

佐伯涼って、良く見るとけっこうイケメンかも?

 

おとなしいから今まで全然思わなかったけど。

 

 

 

真っ黒の黒髪を、自然とワックスでいじっている髪型はわりとおしゃれだし…。

 

永倉みたいに肌は黒くないけど、色白で女みたいに綺麗な肌。

 

 

 

佐伯涼はユリカちゃんの質問にもゆるく答える。

 

 

「んー…俺は今は彼女とかいないんだよね」

 

 

それを聞いて、ユリカちゃんは急に甘ったるい声になって問いかける。

 

 

「へ?ぇ。じゃあ、どんな女性がお好きなんですか??」

 

「タイプ?そんなのないよ。とくに永倉みたいにモテないし」

 

 

いわゆる、草食系男子ってやつね。

 

永倉は見るからに肉食系だし、まるで正反対コンビなのがウケる…。

 

 

でもね、この世の女子たちはやっぱり肉食系が好きみたいだよね

 

「草食系じゃ…大変じゃん…」

 

 

……………。

 

……ん?

 

私いま、声にだして言った?

 

 

そう思ったときには、3人がバッチリ私に注目していた。

 

 

「…ご…ごめん!なんでもない!気にしないで!」

 

 

慌てて訂正し、私は焦ってさらにお酒を口に運ぶ。

 

 

ウゲーッ。もう飲めないのに、また飲んでしまった。

 

 

 

そういえば、若いのにユリカちゃんはお酒が強い。

 

さっきからもう、どのくらい飲んでるだろう?

 

 

そんなユリカちゃんは、テーブルに前のめりになって佐伯涼を見つめる。

 

 

「でも佐伯さんみたいな草食系でも、イケメンなら全然ありですよ!ていうか……あたしと…今度ふたりでご飯でも行きませんか!?」

 

 

私がいま言った言葉にちゃっかり便乗してるし、はっきり言ってるし。

 

まさかの、ユリカちゃんが佐伯涼狙いだったとは驚き。

 

 

 

「えー!ユリカちゃんうそだろ?いくら誘っても俺とは行ってくれないのにー!?」

 

と、永倉が悲惨な声をあげた。

 

 

私はそれを聞いて爆笑する。

 

本当アホなやつ…。

 

 

 

「う?ん。俺とふたりでご飯行ってもつまらないよ?」

 

佐伯涼はそう言ってにっこり笑う。

 

 

これって絶対遠回しに断ってるんだよね?

 

 

そう言ってビールをぐいっと飲み干す。

 

 

ビールの飲みっぷりだけはちょっと男っぽくてドキっとした。

 

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それから、確か4人で2件目に行って、

 

カラオケにも行って…。

 

 

 

花の金曜日を久しぶりに満喫した。

 

 

 

すごく楽しかった。

 

 

永倉は相変わらず馬鹿だし、

 

後輩のユリカちゃんはやっぱり女子力高いし、

 

佐伯涼も思ったより話せるやつだったし。

 

 

 

 

楽しかった…。

 

 

 

うん…。

 

 

楽しかった……。

 

 

 

「ん……」

 

 

 

「あッ……」

 

 

 

急に息苦しくて、それでも何故か気持ちよくて。

 

 

気がつくと、温かい人の体温を感じていた。

 

 

誰だろう。

 

 

お酒のせいで、意識がはっきりとしない。

 

 

だけど、何度も、何度も、キスをされた。

 

 

彼氏じゃないのに、すごく大事にされているような感覚があった。

 

 

真っ暗な部屋。

 

 

私をこんな大事そうに抱きしめているのは、誰?