この人可愛い

「それは、お前がいつも失礼なこと言うからだろー?」

 

 

「そうじゃねーって!あいつの隠された男の本能が…!」

 

 

「女性に向かって、なに言ってんだよ?。お前、酔っ払いすぎだよ」

 

 

 

俺は騒いでうるさい永倉の頭をポンと叩いた。

 

 

別に好きとか言ってるわけじゃないし、たとえばの話なのに。

 

 

 

 

しかし、そんな話をしてから、なぜか俺は石原さんと話すのが緊張するようになった。

 

 

「永倉、佐伯くん、おはよー」

 

 

いつもの朝がきて、挨拶をかわす。

 

 

 

もともと仕事のときは、そんなに話すほうじゃないし、永倉ほど仲もよくない。

 

 

接点は、本当に同じ部署で、デスクが斜め前っていうくらい。

 

 

 

 

彼女のほうも、ユリカちゃんたちみたいにキャピキャピした感じはなくて、仕事仲は本当に落ち着いているので、無駄話も少ない。

 

 

 

昼食だって、いつも同じ部署の女の子同士で食べているし。

 

 

 

なんだ・・。

 

そう考えると、どんなに意識したって、俺と石原さんが関わることってそんなにないんじゃないか?
そんなときだった。

 

永倉がユリカちゃんにちょっかいを出した兼ね合いで…。

 

なぜか俺と、石原さん、そしてユリカちゃん、永倉の4人で、飲みに行くことになったんだ。

 

 

 

正直、あんまり慣れない女の子たちと飲みに行ったりするのは面倒だった。

 

 

でも、場の空気的に、断ったら失礼な気がして断ることもできず、まあ上司はいないし気楽に行こう、と思った。

 

 

 

 

その日の夜……。

 

 

まさか…あんなことになるなんて。

 

 

 

1軒目は4人で永倉の知っている店にいった。

 

 

だけど、その店にいた後半あたりで、
すでにユリカちゃんと永倉はベロベロ。

 

 

ユリカちゃんはなぜか俺に絡んでくるし、
本当、大変だった。

 

 

永倉とのほうがお似合いなのに…。

 

 

 

だけど、本当にびっくりしたのは石原さんだった。

 

 

ずっと料理を盛り付けしたりしてくれて、
気の利く子だなーと思って見ていたんだけど。

 

 

しっかりしているように見えて、途中から明らかに酔いがまわっていた気がする。

 

 

 

やっぱり後輩のユリカちゃんがいるから、自分がしっかりしなきゃ!って思ってたのかな?

 

 

俺はそんな石原さんが、正直見ていて心配だった。

 

 

同時に…

 

やっぱりこうしてお酒の席でよく見てみると、

 

この人、何気に可愛いぞ?と思った。
ぼんやりとそんなことを思って、お酒が回って俺の頭もぼーっとしてきた。

 

 

二次会はカラオケだった。

 

 

俺は人前で歌うことはあまり好きじゃない。

 

 

だけど、永倉がノリのいい曲をいくつも入れて、ユリカちゃんは流行りの女性アーティストの歌を歌いまくる。

 

 

 

そして石原さんは、ぼーっとした顔でウイスキーを飲んでいた。

 

 

「石原さん、歌わないの?」

 

 

「うーん…なんかもう眠い…アラサーには二次会にカラオケはきついのよ」

 

 

 

アラサー…と自分のことを言う石原さん。

 

 

見た目的には、若いユリカちゃんより石原さんのほうが可愛いよ…。

 

と俺は酔った頭で思っていた。

 

 

 

 

 

「おいおい、お前らー!しけてんじゃねーぞ!もりあげろー!!」

 

 

永倉がマイクで大声をあげ、こちらを指差す。

 

 

あいつは、シラフでもうるさいのに、酒が入るともっとひどくなるな…。

 

 

 

いいかげん、頭痛くなってきた。

 

 

・・・・・・トン。

 

 

 

そのときだった。

 

 

突然、石原さんが俺の肩にもたれかかる。

 

え!?

 

「ごめん…ちょっと飲みすぎたみたい。目がまわってる」

 

 

「大丈夫?!」

 

 

心配しつつ、俺の肩のすぐそこに石原さんの横顔があって、内心ドキドキした。

 

 

石原さんの香水かシャンプーの香りがして、彼女はこういう香りがするのかと思った。

 

 

そんなことを思ったからか、俺の中のいけないオスの部分が顔を出したような気がした。

 

 

「石原さん、帰る?」

 

 

「…ん。うん…」

 

 

………!!

 

 

やばい。

 

本当にやばい。

 

 

石原さんて、やっぱり可愛い。

 

いつもオフィスでは強がっている彼女だけど、こうして弱っている姿を見ることができたことが嬉しい。

 

 

俺は永倉のところへ行き、ユリカちゃんが気づかないうちに話をした。

 

 

「石原さん、体調悪いみたいだから、俺ら先に帰るから。お前は…ほら、ユリカちゃんと、頑張れよ」

 

 

だけど永倉は酔っているからか、ほとんど俺の話を聞いていない様子だった。

 

もう酔っ払いに構っている暇はない。