アラサー女子の出会い

「佐伯さん、コーヒーをどうぞ」

 

 

「すみません、ありがとうございます?」

 

 

 

後輩の女の子相手に、敬語でゆる?く返事をした

 

この男は、同じく同期の佐伯涼。

 

 

 

 

普段の仕事ではあまり私語もしないし、

 

いつもヘラヘラしていて、とにかく謎の男だ。

 

 

 

 

 

「あっ。ねぇねぇ、ユリカちゃ?ん!今日定時だよね?帰りさ、飲みにいかなーい?」

 

 

 

そんな佐伯涼の隣のデスクから永倉が、コーヒーを入れてくれた後輩の女の子に声をかける。

 

 

 

永倉は、いつもこんな調子。

 

 

可愛い女の子には目がないし、しょっちゅう色んな女の子をデートに誘っている。

 

 

 

 

「あ。はいっ。是非ご一緒させてくださいっ」

 

 

 

「ヤッター!俺が奢るから楽しみにしていてよねぇ」

 

 

 

「えっと、2人きりじゃあれなので…できれば佐伯さんと、石原さんもご一緒に……」

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

後輩の女の子、ユリカちゃんから突然の無茶振り。

 

 

「奢り」と発言してしまった永倉の表情が曇る。

 

 

 

そして、まさかの自分達の名前まで追加された、佐伯と私は固まった。

 

 

 

「私たちも?」
金曜の夜といえば、私のお決まりは定時で家に帰って、レンタルビデオショップに行って映画を借りる。

 

 

そして大好きなチューハイを飲むのが毎週の日課。

 

 

 

 

面倒くさいことに巻きこまれたなぁ…。

 

 

そう思い、つい永倉を睨みつける。

 

 

心が鬼となった私の形相に、どうやら永倉がビクリとした様子。

 

 

そしてこちらをチラチラと見ながら、ユリカちゃんにさりげなく交渉している。

 

 

 

「ユリカちゃん…あいつはさ、たぶん予定があるんだと…思うんだ?だから無理じゃないかなー?ははは…」

 

 

 

「えー?だったらあたし、いけません!永倉さんってお酒癖悪いって聞きましたし?」

 

 

 

そうそう、こいつ、新入者歓迎会から、かれこれ5年くらい毎年ある会社の飲み会で、毎回泥酔の、女の子にお触りだからね。

 

 

気をつけてね。

 

 

断るのが賢明だよ(笑)

 

 

 

 

「うっ…!た、頼む!せめて…佐伯!!お前は来るだろ?お前、どうせ暇だろ!?」

 

 

 

どうせ暇って…お前、超失礼だろ。

 

 

 

隣のデスクでパソコン入力をしていた佐伯涼に、助けを求める永倉。

 

 

今までの話は聞いていたんだろうけど、ふわふわとした表情で何を考えているのか全然分からない。
そして、ようやく永倉のほうに目をむけた佐伯涼は、

 

 

「んーーーー」

 

と言ってしばらく黙った。

 

 

 

そして、

 

「俺は暇だけど、でも永倉とユリカちゃんのお邪魔になるのもなぁ」

 

 

 

佐伯涼もきっと面倒くさいにちがいない。

 

と、この言葉を聞いて感じた。

 

 

 

 

しかし、ユリカちゃんの推しは強かった。

 

 

「そんなことないです!あたし…じつは前から佐伯さんといろいろとお話してみたいって思ってたんで!」

 

 

「いやいや…でもなぁ……」

 

 

 

 

そう言って佐伯涼が、ちらりとこちらを見る。

 

 

 

なんだよ…私に助けを求めないでよ!

 

とガンつけてやったけど…

 

よくよく考えたら今はけっこう金欠なんだよなぁ。

 

 

 

 

一人で花金を過ごすよりも、

 

永倉の奢りでおいしいもの食べて、

 

たくさん飲んだほうが有意義かもしれない。

 

 

 

 

「よし、んじゃ?永倉の奢りだし…行きますか!」

 

 

と私が言うと、永倉はゲゲーッと大げさなくらい嘆いて、吐き気がどうとか言ってほざいていた。

 

休憩時間になったら殴ろうと思う。

 

 

 

そして、ユリカちゃんは嬉しそうに笑い、佐伯はまたすぐパソコンに目をむけた。